魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 また不安になってきた私は、あの時のことを思い出して、首にかけた空色のペンダントに触れた。

 これが起こしてくれた不思議な現象がなければ、私は今頃生きてはいなかったはずだ。
 宝石は今は沈黙しているが……その輝きを見ていると、少しだけ気持ちが安らぐ。

(助けて……くれたのよね?)

 あの時耳に響いた声を思い出し、その中にうっすらと浮かぶ精緻な六角形の結晶を見つめていると、応えるようにきらりと光る。それがまるで励ましてくれているように思え目を細めていると、部屋のドアが控えめにノックされた。

「シルウィー様、お食事の支度が整いました。よろしければ、ご一緒にいかがですか」
「うん……ありがとう。いただくわ」

 ルシドの声がして、私はその場から立ち上がる。

 今日も彼は、非番の日だというのに、熱を出して臥せっているテレサの様子を見に来てくれている。扉を出るといつもの穏やかな目がこちらを見ていて、心が落ち着いた。
< 372 / 1,187 >

この作品をシェア

pagetop