魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 明らかに並みの貴族とは一線を画した、目にも眩い純白の衣装。そして背中に翻るのは深紅の、帝国旗を模した豪奢なマント。

「くくく……身代を売られたとは聞いていたが、よもやこんな辺境の地で民草どもに埋もれていようとはな。落ちぶれたものだ、賢者の娘よ」

 二度と聞くことはないと思っていた覚えのある声が、私の脳を大きく揺らす。

「な……ぜ……」

 息を詰め、瞳を見開いた私の前で、強い野心を秘めた青い瞳がぎらりと輝いた。

「この帝国の全ては、我がラッフェンハイム皇家に帰するもの。聖女などと謳われるほどの御大層な力を隠し持っていたなど、国家への背信に値しよう。重罪だ、シルウィー・ハクスリンゲン。貴様の身柄はここで徴収する……この、ディオニヒト=アランクニス・フォン・ラッフェンハイムがな!」

 かつて私の人生に止めを打った、この大帝国の継嗣(けいし)が――ここでもまた、新たな暮らしにやっと見出し始めた小さな希望を踏みにじらんとしていた……。
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