魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 場が沈黙し、誰もが起こらなかった最悪の結末を思い浮かべる。
 スレイバート様は間に合わず、私は攫われ、そしてルシドや、もしかしたらテレサまでもが――。

 その妄想を打ち消すかのように、スレイバート様が口を開いた。

『……一度負けただけでそんな簡単に諦めるのかよ。俺は、やつよりお前が劣ってるとは思わない。第一、お前以外にシルウィーを任せられるやつは――』
『いえ』

 険しい顔で見つめ返すスレイバート様に、ルシドはきっぱりと言ってのけた。

『スレイバート様、あなたがそうされるべきです』
『…………俺は――』

 そんなことが無理なのは、私にだって分かる。

 この方は、本来私なんかがこうして気軽に話せるような身分じゃない。帝国内でも十指に入ろうかという誰もが羨む大貴族なのだ。そんな人が四六時中私に目を光らせることなど、首輪でもつけて連れ歩かれない限り無理だろう。私もそんな生活、望んではいない。
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