魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 しかし、誰よりも近くにいてそれが分かっているはずのルシドは、さらに声を荒げた。

『もうあなたも分かっているはずでしょう! いつまで自分の気持ちに嘘を――』
『それ以上言うんじゃねえ!』
『ちょっと――ふたりとも!』

 いきなりふたりのつかみ合いになり、私は慌ててふたりの間に割って入ろうとする。だが……。

『お姉様……! ここはふたりだけにしてあげましょう』

 それを後ろから抱きついて止めたのはテレサだった。

『でも……』
『大丈夫です』

 彼女は芯のある瞳でじっと私の目の奥を見通すと、強い力で腕を引いていく。

 私は心配ながらも、互いに襟首を掴み合ったまま睨み合うふたりの姿を残し、部屋の扉を潜った。
< 417 / 1,187 >

この作品をシェア

pagetop