魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 引き結んだ私の口から我慢の声が漏れ、そしてすこしずつ……その塊は大きくなり。

「えいっ!」

 ――バシャッ!
 威勢のいい気合と共に青い光が瞬いて、目の前の藁人形を閉じ込めた一体の氷像が完成する。

「……や、やった」
「よし、上出来だ」

 ……ああそう、なにをしているのかという話だった。

 実は今私は、この後ろに立つボースウィン公爵スレイバート様に直接教えを乞い、魔法の訓練を行っている。

 本日も我が婚約者様は流れるような銀髪を煌かせ、その立ち姿も無駄を削ぎ落とした名工の彫刻のようで、どこから見ても美しい。
 振り向いた私はその見慣れたはずのやや皮肉気な笑みにどきっとしながらも、魔法が上手く成功した喜びでぐっと身体を縮めた。

「悪くねー制御センスだ。後は、魔法の起動に掛かるまでの時間だな。今んとこは鈍くて見ちゃいらんね―が、その内扱い慣れてくりゃ、身を守る程度の使い物にはなるだろ」
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