魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「ここでお兄様がお休みになっています。どうか会っていただけますか?」

 その質問に、私の心臓はどきりと脈打った。
 今から、私をああして命懸けで助けてくれたあの男性と再会するのだ。しかも彼は私のことを「花嫁」だなんて口にして――。

 あの時を思い出すと、胸が高鳴る。広い背中とこちらを振り返った時の頼もしい笑みが、完全に心の中に焼き付いてしまったようで。
 どういった態度で接すればいいのかよくわからないが、とりあえず会わなければ何も話が進まない。意を決して頷く。

「はい。心の準備はできました、開けてください」
「テレサ様、では――」
「お願い」

 側に控えた騎士ルシドが、扉を数度ノックするのを私はどきどきして見守った。だが、室内から返事はない。彼は耳をそばだてると小声で言った。

「お休みになっているようですが、どうしましょう」
「いいわ、開けてちょうだい。事は急を要するもの」
「はい」
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