魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 テレサ様の言いようが気にはなったが、それを問う前にルシドはゆっくりと重たそうな扉を開く。急ぐ事柄とは何なのか、今回の婚約に関係がありそうで不審に思う私は部屋の中に入り込んだふたりの後に続く。

 そして息を呑んだ。

(……本当に、生きているの?)

 ……一瞬、精巧に作られた彫像が寝台横たわっているのかと思った。

 生気のない白い身体を流れるような銀髪が縁取り、微動だにしないその様子からは神聖さすら漂う。

 ただ、一点だけ。
 その身体を(むしば)む黒々としたなにかの(あと)が、その完璧さを崩していた。美しい姿と相反するその様子が、ひどく痛々しく感じられる……。

「お兄様……」

 薄着に包まれたその胸が上下しているのを見ることで、ようやく彼が生きていることを理解する。そんな私の前で、ベッドに近づいたテレサ様がそっと囁きかけ、遠慮がちに肩を揺らした。
< 49 / 1,187 >

この作品をシェア

pagetop