魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「どうもこうも、何日ぶっつづけで仕事してんだお前」
「い、いくらだっていいでしょうが! 好きでやっていることなんですから!」
「ダメに決まってんだろ! それで部下を使い潰したなんてことになったら、上役の俺の責任になんだよ!」

 言われてみれば、スレイバート様の執務室に伺って、クラウスさんが机で作業しているのを見かけない日はひどく稀だ。その薄っすらと黒ずんだ下目蓋を見ると、睡眠をちゃんととっているのすら怪しく思える。それに関してはテレサもふむと同意した。

「確かに、クラウスは酒も煙草もやらないせいか、お仕事依存の気質が昔からありましたものね……なにがそんなに楽しいんですの?」

 すると、クラウスさんはびかぁっと目を光らせながら、わなわなと両手を震わせて興奮気味に言い募った。

「考えても見てください! 我々の仕事、それはすなわち領地の繁栄を監督し……我が子のように愛し育てること! 適切なところに資財という栄養を行き渡らせ、余計なトラブルがあれば目を摘んでやって……まるで母のような慈しみを持って日々の発展を見守る。それに勝る喜びなど、いずこにありましょうか!」

 クラウスさんはその眼差しを、郷土愛溢れる――というにはやや行き過ぎた色合いにぎらつかせ、両手を広げ高らかに宣言する。
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