魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 いくぶんかの憂慮を打ち消すようにクラウスさんは、にこやかな表情で通りの奥にある、夕日を背負ったひとつの建物を指差そうとした。

 その前で人気が絶え、朱色の光に照らされた路地に、すうっと影が伸びる。

(…………?)

 眩しくてよく見えないその姿は、近付くたびに鮮明になり……私たちの行く手を阻んでいるように思えてきた。
 そして、その立ち姿が記憶のどこかに引っ掛かり――。

「あ、あの人っ……!」

 私が警戒の声を上げると同時、彼は目深に被っていたフードを取り去り、その目立つ容姿をを光の下に晒して見せる。

 まるで、落ちゆく太陽と同化するような、派手な赤髪。私を睨み付ける殺意に塗れた瞳。

 もしかして、彼は――。
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