魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「クラウス。言っておくけれど……お兄様の前では、絶対にシルウィーお姉様にだけは色目を使わないのよ? クビにされて城から追い出されたって知らないんだから」
「それは私も、とくと肝に応じておりますとも。そんなことをすれば、お得意の氷魔法で氷山の奥深くにでも封印され、次の年までに出してもらえるかどうか。ああ、いくら仕事が溜まってしまうか考えただけで……あな、恐ろしや!」
「……あなたはあなたで、その環境でも仕事さえ与えていれば満足してそうだから、ちょっと怖いわよ」

 今もこうして軽いジョークを飛ばし合う、このふたりのように――痛みも悲しみも、辛い出来事を乗り越えればその分強くなれるはず。
 彼らの笑顔を見ていると、私も王都の屋敷で閉じこもっていた時より……そしてこれからもちょっとずつ成長していくんだと、明日からの自分にも期待できるような気がしてきた。

「ねえテレサ。そうしたら、次は予定通り、リュドベルク領に向かうの?」
「はい! そちらに出向くという連絡はしておいたので……最悪お仕事などでお留守でしたら、お母様とお会いできない可能性もありますが。せっかくお姉様とも顔合わせできる機会ですので」
「う~む、つい先日、あちら側の近況を知らせるよう使いを出しましたが、結局我々とは入れ違いになってしまいましたねぇ。リュドベルク領もボースウィン領に並ぶほどの大領地ですし、エルマ様も良家の子女だ。多分色々とご予定がおありになり、忙しくされていらっしゃるんでしょう。さ、そうこうしているうちに、旅の醍醐味である今夜のお宿に着きそうですよ」
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