魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 そこでようやく彼女の言っている意味を私は理解した。

「彼に魔法は使えない。しかし、生前のお父様に直接剣の教えを乞うてその技を磨き抜き、速さにおいて右に出るもの無しと認められた、神速の剣士……。それが彼、クラウス・ノイスラーなのです!」
「――がはぁっ……!」

 宣言と同時、地面に大きく叩きつけられた青年が苦痛の声を漏らし、私は大きく目を見開く。

「て、てめぇ……」
「やあすごいすごい、その根性だけは買いますよ。よければうちの騎士団で働いてみません? 雑用係ならいつでも空いていますし」

 よろよろとかろうじて立ち上がる青年を、クラウスさんはやる気のない拍手で讃えている。まるで、よちよち歩きの子どもの面倒を見てあげているかのように。

 格が違う……。
 魔法士と非魔法士の争いなのに、終始クラウスさんの方が圧倒している。

 しかも、満身創痍のあちらの身体には、まだ切り傷ひとつ付いていないのだ。剣を抜く必要すらあったのかが疑問に思えてくる。
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