魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 疲れなど微塵も見せないそんな顔で促され、唖然とした私はのろのろ立ち上がった。その間にもクラウスさんは剣の柄尻で「ほーらほら、あなたたちもいつまでも寝っ転がってないでさっさと動く。ボースウィン領騎士団の名が泣きますよ」なんて言って叩き、倒れ伏した騎士たちを起こしてやっていた。

 結局、彼はこの戦闘でほとんど刃を振るわず……実力の一端を覗かせただけで、強力な魔法士を撃退してしまった。

「お姉様、そろそろ。抱き締めていてくださるのは嬉しいのですけど、私も怪我をした人たちを治療しなければいけませんので……」
「あ、そうね……。うん、私も手伝う!」

 そこで私はやっと我に返り、治療を始めるテレサに手を貸してゆく。しかし、どうしても、これまでのクラウスさんの印象と、先程の大活躍が一致してくれず……。

(…………なんだろう。イヌの子と遊んでたつもりが、急に後から狼の子でしたって言われてびっくりしちゃった――みたいな)

 なんだか、不思議な生き物を見るような目で、しばらくその背中を追ってしまわずにはいられなかった。
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