魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「そ……そうだな。それは間違いない。決して我が実力が下賤な者どもに劣るなどありえん。数年前……剣術大会での敗北でも、あれはたまたま汗が目に入り、私の集中を乱したのだ! 決して実力の優劣ではなく、運がよかっただけ! そうだ……今回も、やつはいつも運よく自分以外の力で勝ち上がる、卑怯者だ!」

 どすどすと歩いてきて、やっと隣に腰を落ち着けた皇太子の手に、グラスワインを握らせてやりながら、ヴェロニカは耳元で囁いた。

「どうでしょう。そのような愚か者は、お父上にご相談なさり、公爵位を剥奪してやっては。大領地を預かる公爵とはいえ、所詮は辺境領の田舎者でしょう? それが、我が国で最も尊い一族の名を汚したというのですから、大義名分としては十分でしょう。皇帝陛下にご進言なさってみては?」
「まことにその通りだ。私もそれは考えた……だがな」

 同情するように見せかけたヴェロニカの甘言に頷くと、ディオニヒトは大いに憤って見せた。

「やつめ、巧妙にも先手を打っていたのだ。先日から多くの貢物がボースウィン領から皇宮へと運び込まれていたのだが、その内容が分かるか?」
「いいえ、想像もできませんわ」
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