魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 今後シルウィーを殺す機会などいくらでもある。あの娘が邪魔をするのなら……。こちらの魔手をすり抜け、幾度も命を拾い、這い上がってくるのなら。
 その度に突き落とし、地獄の苦しみと絶望を味わわせてやる……。

 それをきっと、ボースウィン公爵は邪魔しようとするだろう。ならば次は、あの誇り高き表情をも苦悩に歪め、シルウィーとの仲を引き裂いてやるのも、また楽しそうだ。

「ヴェロニカ、君だけが私を……正しく認めてくれる」
「んふふ……そうです。ディオニヒト様、私だけを信じて……」

 ディオニヒトは、気付かずにただ夢中で唇を貪り続けている。そこから、ヴェロニカの操る呪いの影が自分の内側にするすると入り込んでゆくのにも……。
 これは彼にとって望みを叶える片道切符。来たるべき日に、その役割を果たすことになる。

(シルウィー……大切な人を失った時、あなたはどんな顔で泣くのかしら……?)

 虚ろに変わってゆく皇太子の瞳に彼女の姿が映り込む。するとその面影は……自分と同じ顔をしていた、かつて最も愛しく許し難かった存在のものと重なってゆき――ヴェロニカは陶然とした笑みを浮かべた。
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