魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「……本当になにもやる気がねえってんなら、もう死ぬまでずっとそうしてろ。目の前で誰かが倒れても、眉ひとつも動かさずにいられるならな」

 そう吐き捨て、スレイバート様は席へと戻っていく。

 私はラルフさんに声を掛けるか迷ったが、止めておいた。

 先程まで無気力だった彼の瞳には、微かに悔しさと悲しみと、家族を悼む気持ちが映っていた気がしたから。

 彼は大切な人のために行動できる人だ。そしてきっかけはすでにスレイバート様が与えた。
 なら、どうするにしても選ぶのは彼自身で、悩む時間も必要だろう。

 後ろ髪を引かれつつもそのまま座席に戻ると、私は窓から晴れ間の覗かない空を見上げる。

(精霊様……。この国を見守ってくれているというそんな存在が本当にいるのなら……ひとりでも多くの人々を助けてあげてくれませんか?)

 そんな願いにも似た問いかけに、答えを示してくれるものなどいない。

 でも……どうか、これ以上悲しい報せが誰かに届きませんように――それだけをひたすら祈ると、私は現地への到着を待ち侘びた。
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