魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 深い感情を宿した言葉は、否応なく聞くものの心を揺らす。

 ぎゅっと胸に秘めた想いを圧縮したかのような切ない声に、私の心臓がどくりと、疼くような痛みを発す。それは少しだけあの時の――ルシドの姉アイリーンさんとスレイバート様が対話しているのを目にして感じた気持ちと、似ていると思った。

 そこまでを告げると、勘違いしないでほしいと断りを入れながらエルマ様は続ける。

「スレイバートにはなんの憎しみも抱いてないし、アルフリードに悪気なんてないのは分かっていたわ。でも……やはりどうしても、今目の前にいるあたくしを一番に想って欲しかった。けれど……彼の心はテレサが生まれてからも変わらないように感じた。若かったし、軽率だったとも思うけれど……でも、どうしても彼の側にそのままいるのが辛くて仕方なかった」

 ほんのわずかに、ずっと彼女が感じていた苦しみの重さが、私にも伝わる。自分の手では貶めることも、埋めることも……触れることすら叶わない、愛する人の記憶深くに刻み込まれてしまった特別な(ひと)

「……苦しくて苦しくて、おかしくなりそうで、逃げたの。それが、あたくしがあの場所を離れた理由」
「…………」

 それからもしばらく、エルマ様はじっと身じろぎもせずその場に佇んでいた。
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