魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「あなたたちは、英雄になろうとして命を無駄にするようなバカじゃないはず。スレイバートだって、こう見えて意外と臆病だものね。でも……あたくしも逃げ出したとはいえ、一応ボースウィン家に属する者。領主の大博打を見て見ぬふりするわけにもいかないのよ。お願いだから、無茶をするのはよして。それとも、こんな非常事態をどうにかできるっていう確証でもあるのかしら?」

 あらかじめ、エルマ様は配下たちを連れてきていたようだ。ざっと甲冑姿の兵士たちが周りを取り囲み、拘束しようとする。

 対して、スレイバート様は落ち着いた視線を私に投げかける。

「シルウィー、お前の力を見せてやれ」
「はい……」

 どうせ街を出た後、安全のため近辺の瘴気をある程度取り除いてから進むつもりだったのだ。私はそっと胸の前で手を組み、意識を心の奥に飛び込ませる。

「……? これは……」

 すると息を吸うかのような容易さで、以前よりもずっと速やかに身体の中に瘴気が取り込まれてくる。周りの空気感の変化を感じたか、兵士たちから驚きの声が上がる。
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