魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「お、おい……空の色が、変わっていくぞ。紫の霧の合間に、晴れ間が覗き出した!」
「こ……これがボースウィン領の聖女の力だってのか!?」

 おおきなどよめきの中スレイバート様は立ち上がると、エルマ様の後ろ、リュドベルク城の方角を指差す。

「これで分かったろ。こいつは、瘴気を払い、呪いを打ち消すことのできる唯一の能力者なんだ。あの強力な呪いに長年苦しめられていた俺も、こいつの力で救ってもらった。だから危険を承知で一度だけリュドベルク城に向かわせ、できるだけのことをやらせてほしい」

 エルマ様も信じられないという様子でいたが、その後素早く表情を引き締め、私に問いかけてくる。

「……話は分かったわ。でもシルウィー、あなたはどうしてそこまで? ここは、あなたの故郷でも何でもない。聖女と呼ばれたからって、なにもかもの責任を負わなくてはならない、なんてことはないの。むしろもっと……あなたは自分の身を慮るべきなのよ?」

 彼女の案ずる表情は真剣なもので、本当に心配してくれているのだとありがたく思う。そして同時に今は、私自身の意志をはっきりと伝えるべきところだと思った。スレイバート様が背中にしっかりとした手を当てて、それを支えてくれる。
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