魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「ふふ……ありがとね。でもあたくしも、この地の貴族としてできる限りの責任を果たすつもり。それに、あなたたちが無事に帰ってくるなら、すぐにこの領地は元通りになるわよ……そっちの領地でできたことが、あたくしたちにできないはずはないって、シルウィーがそう思わせてくれたしね。だからあなたたちも必ず一緒に帰って来て、ちゃんと幸せになるところ、拝ませなさいよ?」

 結婚を見越したようなエルマ様の意地悪に、真っ赤になった私の口は、ぴたりと貝のように閉じてしまう。
 だが、その返事は隣のスレイバート様がきっちりと代わって務めてくれた。

「任せとけ。悪かったことが全部帳消しになっちまうくらいの、今年一番のめでたい席にしてやるぜ――」
「ま、ご馳走様……!」
「へへ……んじゃ、そろそろ出発と行きますか!」

 そうして――御者を引き受けたラルフさんが打って変わった快活な声で旅立ちを宣言すると、正常に戻った辺りの様子になんだなんだと集まってきていた人々が、皆で大手を振って見送り始めた。

 遠くに霞むまで彼らに手を振り返した後、私達は瘴気渦巻く遠くの空を見つめる――。
 はっきりと紫黒の色に染まるリュドベルク領の中心地。あそこで、すべてが待つ。

 どうか……そこに希望の欠片がまだ残されていますように――。

 そう強く願うと、私たちは荒々しく蹄を立てる馬たちの足に任せ、呪われた城への道行きを急いでいった……。
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