魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 しかしそれは、激突する寸前で対象を見失う。

「くっ!? どこに行きやがった!」
「ふふふ、こちらよ」

 そしていかなる魔法を使ったのか、嘲笑うように女性は、今度は対角となる部屋の角にふわりと降り立つ。

 ラルフさんはそれを追い詰めようとなんども駆けたが、結果はすべて同じ。触れようとした瞬間ふっと消え、ローブの端すら掴めない。

「ふふふ……よくお分かりになったでしょう? あなたには、私をどうすることもできない。妹さんを助けてやることもね……。でもそんな哀れなあなたにひとつだけ、救われる方法を提示してあげましょうか」
「なんだと……?」

 ――カチンという金属音。
 くすりと笑った後、女性は一本の、刃が黒く染まったナイフを、ラルフさんの前に転がした。

「妹さんをもし、もとに戻してもらいたいのなら……それで後ろの聖女とやらを――ひと突きにして殺しなさい!」
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