魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「なっ……! ふ、ふざけんなっ!」
びくりと肩を竦める私をちらりと見て、ラルフさんが踵でナイフを踏みにじった。
「んなこと、できるはずがねえだろうがっ! この人は、何度も命を狙った俺を責めもせず、ここまで導いてくれたんだぞっ! それを裏切るなんざ……それはもう、人じゃねぇだろ!」
髪の毛が逆立つような憤激を真正面から受けながら、そよ風の様に受け流すと女性は艶やかな唇を微笑ませた。
「うふふ……そうかもしれないわねぇ。でも、それのどこが悪いというの? ささやかなプライドや甘さのために、もっともあなたが大切にするものを失っていいのかしら? 後ろをよく見てみなさい、あなたの可愛い妹は、今もどんどん魔力を吸われて苦しく辛い思いをしているわよ。助けてあげなくていいのかしら……お兄ちゃん?」
「く、そぉっ……」
私は今の展開と女性の悪辣さに頭が付いていかず、大木の表面に手を添えたまま、血の気を失くした。
その間にも、ラルフさんの葛藤は続いている。足元のナイフを蹴り返そうと振り上げた足が、ゆっくりと止まり……何度もその場で力なく揺れる。
びくりと肩を竦める私をちらりと見て、ラルフさんが踵でナイフを踏みにじった。
「んなこと、できるはずがねえだろうがっ! この人は、何度も命を狙った俺を責めもせず、ここまで導いてくれたんだぞっ! それを裏切るなんざ……それはもう、人じゃねぇだろ!」
髪の毛が逆立つような憤激を真正面から受けながら、そよ風の様に受け流すと女性は艶やかな唇を微笑ませた。
「うふふ……そうかもしれないわねぇ。でも、それのどこが悪いというの? ささやかなプライドや甘さのために、もっともあなたが大切にするものを失っていいのかしら? 後ろをよく見てみなさい、あなたの可愛い妹は、今もどんどん魔力を吸われて苦しく辛い思いをしているわよ。助けてあげなくていいのかしら……お兄ちゃん?」
「く、そぉっ……」
私は今の展開と女性の悪辣さに頭が付いていかず、大木の表面に手を添えたまま、血の気を失くした。
その間にも、ラルフさんの葛藤は続いている。足元のナイフを蹴り返そうと振り上げた足が、ゆっくりと止まり……何度もその場で力なく揺れる。