魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 という話を聞いたのも、ボースウィン城の自室のベッドの上で。
 目覚めるとその場所に寝かされていて、世話をしてくれていた侍女たちに一週間以上の時間が過ぎたと聞かされた時は仰天してしまった。

 カヤさんに同調し、呼びかけていたのは体感でせいぜい数十分がいいところだったのに……。他者の心の中に入り込むという試み自体に相当の無理があったのか、激しく精神力を消耗し、かなり長い昏睡状態にあったようだ。
 起きた後もどこか自分の感覚がぼやけ、向こうでの記憶が思い出せなかったりして、しばらくは看護が必要な生活を余儀なくされた。

 もし、あのまま自分の身体に帰って来られなかったらどうなっていたのだろう――なんてことを想像して相当怖くなったし、今後なるべくこういう行動は慎みたいものだ。

 それで、私以外の人たちの話だけれど……。

 まずスレイバート様は、意識を失った私をこちらに送った後、クラウスさんが出発を控えさせていた支援部隊とともに、また向こうへと旅立ってしまったらしい。
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