魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 すらりとした細身に、流れ落ちる銀の長い髪。まともな方の横顔だけがこちらからは見え、周りが雪に囲まれた中だと、まるで氷の精のようにも思えてくる。よく作り込まれた芸術品のように、いつまでも見ていても、飽きるということがない……。

 ――私を部屋から強引に連れ出した後、彼は行き先も告げず白い大きな馬に私を乗せ、「落ちんなよ」と一言だけ注意し、手綱を取って走らせ始めた。最初は目も開けていられなかったけれど、次第に要領が分かり、周りの景色に目をやる余裕も出てくる。

 すると彼は、道すがら色々な話をしてくれた。
 自分の呪いのせいで周りに瘴気や魔物の被害が増え、悔しく思っていること。
 他の人に怯えられないように、普段はこうして仮面と手袋で呪いの痕を隠すようにしていること。
 テレサは父親の後妻の子で、彼女の母はこの厳しい北の地を嫌って、妹を産んだきり実家に戻ってしまったこと……など。

 ならば彼の方の母親は一体どうしたのだろうと思ったけれど、そこを聞くことはどうも憚られた。こんな大変な時にふたりの側にいないということは、亡くなっているか仲違いしてしまったということが簡単に想像できたからだ。

 それから、私もいくつか尋ねられて話をした。テレサたちにすでに話した私の体質のことや、今までどんな生活を実家で送っていたのか、とか。
 それを聞くと彼は、「お前を金で買った俺が言えることじゃねーが……やっぱ、ろくでもねー父親だな」と面白くもなさそうに吐き捨てた。
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