魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 それと、意外と盛り上がったのが私のお母さんの話題だった。

 どうやら、母マルグリットはこのボースウィン領を訪れたことがあるらしく、驚くことにスレイバート様や、父親のアルフリード様とも面識があったらしい。
 生まれる前のことだから、もう十数年まえのことだけれど、彼はそのことをよく覚えているようで、当時を懐かしむように語る。

『くっそ小いさい頃に、領地で大量発生してくれた魔物を駆除するのを手伝ってくれてな。その時に魔法の手ほどきを受けたんだよ』

 実家では、母の話を誰からも聞くことができなかったから……私がつい勢い込んでどんな人だったか尋ねると、彼は「そういや母親の顔も知らねーんだっけか。ついてねーやつ」と苦笑し、彼の知る母の姿を教えてくれた。

 母はなかなかにすごい人物だったらしく、スレイバート様の父、極北の英雄と呼ばれるアルフリード様を越えるほどの魔法の使い手だったそうだ。彼女が来てくれたことで、相当の被害を出していた魔物たちの群れも瞬く間に壊滅し、その後ろ姿には幼かったスレイバート様もずいぶんと憧れたらしい。

 美人で才能もあるなんて羨ましい――そう思った私に、しかしスレイバート様は(しか)め面で指を突き付けてきた。
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