魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が？ ～傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた～

５．上がって落ちて -ups and downs-

　テレサの誕生日は大成功で幕を閉じ……それからまた数日。

　ラルフさんたちは、スレイバート様の許しを得て、しばらくボースウィン城に逗留することになった。カヤさんの体力的に無理のない範囲で、ボースウィン領を日々観光しているみたい。
　テレサともずいぶん仲良くなったようで、もうなんと、お互い名前で呼び合うくらいになっている。面倒見のいい彼女が、お城にいる間はよく妹の世話をしてくれると、ラルフさんも嬉しそうに話していた。

　だが残念なことに、やはりテレサの聖属性魔法でもカヤさんの手足の治療を行うことはできなかった。であれど、年の近い友人ができたことは、彼女の精神にいい影響を与えているみたいで、リュドベルク領にいた頃よりもわずかではあるが手足に力が入りやすくなってきていると喜んでいた。彼女の努力する姿を見ると、自然もこちらも頑張らないとと思えてくるし、お互いにいい影響を受けていると、テレサもより活動的になっている。

　そんな中、私はというと……少々憂鬱な気持ちを持て余していた。カヤさんとラルフさんがこちらに留まってくれて、賑やかになったのは嬉しい。でも、どうしてもなにか欠けているように思えるのは……やはりあの人が、それだけ私にとって大きな存在になった証拠だろう。

　そう……スレイバート様は今、この城にはいない。