魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 エルマ様なら、テレサを案じてあちら側に呼び寄せることも厭うまい。仲良し親子のエピソードが聞けて、なんだかちょっとほっこりした。

 そこでカヤさんがくるりと背中越しに息巻いてくる。

「そしたらテレサ、今年の冬はこっちに来てよ! 私もエルマ様にご挨拶に行きたいし。実は私もあんまりリュドベルク領のこと詳しくないんだけど……でも、その分お兄ちゃんが何でも知ってるから、案内係として最適なの! 私もそれまでにはもっと動けるようになっておくから!」
「おいおい、兄貴を顎で使うなよ。まあでも、可愛い妹にそこまで言われたら、ひと肌脱がない訳にもいかねえなあ。テレサ嬢、向こうでの案内は任せときなっ」
「ありがとうございます、ラルフ様」

 笑顔でぺこりと頭を下げるテレサに照れつつ、「なんてこたねーさ」と安請け合いしたラルフさん。
 だが、そんな妹に近づく男の影をこの人が黙ってみているはずはなく……。

 ――ひゅんと、軽い音がしたのはその時だった。

 遠くから投げつけられ、彼の鼻先を掠めたのは……氷の矢尻?
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