魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 その剣幕に思わず姿勢を正すと、スレイバート様がわずかに戸惑いを見せつつ、こちらに手のひらを差し出した。

「手」
「あ、はい」

 なんだろう――私がそれに応じて左手の指先をちょんと乗せると、彼は上着の懐を探り、あるものを取り出した。それは彼の手に寄り、すっとこちらの薬指に嵌まる。

「え……これって」

 そこに輝いたのは、ちょうど真ん中で紫と黒に等分された、ひとつの石が輝く銀の指輪。
 まさしくこれは……。

 もう少し先に届く予定だった、私たちの婚約指輪だ――。

「しばらく会えねえから、急いで作ってもらってきた。俺も付けてる。寂しくなったらこれでも眺めとけ」

 彼は素っ気なく言うと、自分の左手をひっくり返してみせた。そこには、まったく同じデザインの指輪が輝いていて、私は何度も瞬きして確かめた。
< 754 / 1,187 >

この作品をシェア

pagetop