魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 したところで、目の前のすぐそばに、彼の顔があった。

 いつのまに――? 
 じっとこちらを覗くその視線に耐え切れず、大きく後ろに後ずさる私。けれどそんなこと構わずに、彼は私と肩が触れ合う位置に近づきどっかりと腰を下ろした。探るような視線が痛い。

「ど、どうしてさっきからじろじろと見てくるんです!?」
「お前な。自分があんだけ人のことを眺めといてそりゃねーだろ」

 どうやら、私が後ろから彼を凝視していたことはきっちりバレていたらしい。

「そんなに気になってんのか? これのことが……」
「あっ……」

 彼は仮面を外すと、自分の膝の上に放り、私の手を強引に黒い痕で塗りつぶされた頬に触れさせた。その柔らかい感触にどきっとする。

「ほら、なんともねーだろ。感染(うつ)るよーなもんでもねーし、妙な勘ぐりしてんなよ」
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