魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 ちょっと褒めようとしたらこれで、私は本能的に素早く二歩距離を空けた。すると彼は馬鹿にしたように小さく吹き出し、喉を咳払いで整えながら近づいてくる人々を待ち受ける。

「これはこれは領主様。このような寂れた村に顔を出していただいて……。おや、そちらの方はもしや」

 村人たちの集団の中から老人が進みだし、にっこりと私を見た。するとスレイバート様は、やや照れたようにぽりぽりと頬を掻きながら答えた。

「ああ、村長。こいつは――とりあえず、俺の暫定(ざんてい)嫁候補ってとこだ。それより見回りがてら、近くの魔物どもは潰しといたから。しばらくは警戒せずに済むと思うぜ」
「おお……それはありがたい!」

 単なる憂さ晴らしが目的の散歩だと思っていたら、実は領民の治安維持のためであったらしい。集まってきた村人たちの間からも、安堵の声が漏れ聞こえる。

 彼らが恐れずに話しかけていることからも、周りとスレイバート様の良好な関係性は窺え、そこは素直に人として尊敬できるところだと思った。
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