魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「そうなったら、わたしはお姉ちゃんのお支度係をさせてもらっていいかな? 毎日早起きして、お姉ちゃんの髪を梳かして、着替えて見送るの。楽しそうでしょ?」
「そんなこと言って。どうせあんたのことだから、それが終わったらどこかに隠れて、夕方まで昼寝でもしてごろごろ過ごすんでしょう? この、怠け者」
「えへへ、バレちゃった」

 またシリルの頭をぽかり、とやりながら仕方なさそうにベリカは微笑んだ。でも、それでいい。自分が巫女の役目をちゃんと務めれば、妹がいくら楽をしてもお釣りが来る。そしていつか自分に子どもができたら、シリルに育てさせてやればいい。いくらなんでもその頃にはもう少ししっかりしているだろうから。

 そんな風な、穏やかで幸せな未来が、ベリカの目には見えていた。

 ――だが、それは……見事に崩れ去り、手の届かない遠くへと行ってしまった。書物に歴史として刻まれる、遥か昔。選別の儀式が行われようとしていた今日、この日に――。



「……う…………っ――」
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