魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 その結果がこれだ。多くの命が失われ、今も……村中から家族の死を悼み泣き叫ぶ声が聞こえている。

「みんなは……」

 ベリカは、ところどころに負った傷を押さえながら、ずるずると足を引きずって歩いてゆく。彼女もまた、精霊の力を振るって奮戦したものの、戦いの途中で力を使い切り、倒れてしまったのだ。

 敵が去っていったということは、なんとか撃退できたということなのだろう。ならば、とりあえずすべきことは現状の把握だ。家族……特に自分がいないとなにもできない妹のシリルだけは、自分が助けてやらないと……。

 やがて、ベリカは人が集まる村の中心部にまで辿り着く。
 つい先ほどまで、祭りの準備に沸いていた大きな広場。しかしそこで見た光景は彼女にとって衝撃的なものだった。

「――終わりました! 次の人を治しますから、すぐに連れてきてください!」
(シリル……? いったいなにを……)

 その真ん中で、額に汗を流し懸命な表情で村人たちに指示を送るのは、間違いなく妹のシリル。彼女は怪我人の傷口に手を添え、なにかをしていた。ベリカは立ち止まり、その様子を注意深く観察し……そして悟った。
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