明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします
「私?」
「澪をだと。高橋がどうしてそんな」

 桐吾の顔が険しくなった。澪に関することなら全方位に厳しくなる桐吾。それは信頼する華蓮であっても同様だ。
 白玉はペロリと舌なめずりをした。よほど華蓮の邪気が気に入ったらしい。

「なかなか美味な葛藤であった――誰ぞに命じられてのことであろう。本心は桐吾に忠実な女よ」
「命じられた――?」
「澪を邪魔にしておる者。桐吾も気づいておろうが」

 上から言われ、桐吾はムッとした。社内のことなど知らないはずの白玉なのに生意気な。

「筆頭は伯父だな。桜山守に接近したがっている、見合いの元凶だ」
「そう。そやつの命令で渋々来たというところか」
「すごーい! 白玉どうしてそんなことわかるの?」

 瞳を輝かせて澪は床に降りた。ペタンと白玉のそばに座りワクワクしている。自分が探られていたというのに危機感を持ってくれと桐吾はため息をついた。

「待て澪。白玉の言うことが本当だという根拠がない」
「疑うか。ひどいのう」

 起き上がった白玉はこれ見よがしに澪の膝になついた。ぴょこんとした猫耳を澪がなでる。桐吾はムッとしたのを押し隠し表情を消した。
 澪の膝を占拠するのは猫の姿ならなんとも思わない。だが少年になってニヤニヤしつつやられるとクソ腹立たしかった。桐吾は冷ややかに言い放った。

「疑って当然だろう」
「甘いな。我は喰った邪気からさまざまな事を読み取っているのだ」
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