明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします
「桐吾への切り札として使えるか調べているのだろうよ。だがどう探っても何者なのかわからぬまま。それで本人に接触したのではないか? まさかよみがえった祟り神とは思うまい」
「……私、祟り神かもしれないけど何もできないのよ? 白玉みたいに邪気を食べて強くなるなんてこともないし」

 澪はごにょ、とつぶやいた。

(白玉はいいな。私よりよっぽど役に立てるもの。こんな私、桐吾さんにふさわしくない)

 オス猫と〈妻〉の澪を比べるのもおかしいのだが、澪の自己評価はとことん低くなった。

 澪は封じられていた祠から抜け出した。だが憎い相手をどうやって祟ればいいかわからない。実体はあるが、ごく普通のことしかできない。
 現代の街には右往左往するばかりだし、料理も下手で酒を飲めば酔いつぶれ――思い返してもこれまで何もいいところがなかった。

「……私って何ができるの?」
「澪」

 ずうぅーん、と落ち込む澪に、桐吾は腰を浮かした。だが元からくっついていた白玉の方が早い。ぎゅ、と胸に抱きついてかわいこぶった。

「なーんにもしなくたって、澪はカワイイよ?」

 いきなりの男の子モードだ。澪もつい笑い出す。

「やあだ、白玉の方がカワイイじゃない」
「ええー? 僕はカッコよくなりたいなあ。でね、大人になったら澪のことお嫁さんにするんだ!」
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