明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします
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「――というわけで地開二部が指名されたわけだが」
「嫌そうなのが漏れてますよ部長」

 桐吾の仏頂面に小声で注意したのは高橋華蓮だ。個別の面談で、すでに二人のPCにはファイルが共有されている。SAKURA観光開発からの事業案だった。
 豊かな森と丘陵を活かしたリゾート計画。都市からの近さが有利な立地だ。ただ集客のためにはアクセス手段の改善が必要、とある。

「すでに詰めてあるのが気に入らないな。うちは下請けじゃない」
「しかしひっくり返すだけの根拠がないと、これベースでやることになると思います。だいぶ手堅いプランで、面白みは薄いですが」
「……あらためて現地を見てこようと思う。地元住民に知人がいるんだ」

 これは澪に限ったことではない。駒木野には父方の親戚筋が残っているし、小学校時代の同窓生も探せばいるだろう。
 だが、桐吾の念頭にあったのはもちろん澪。それを華蓮は敏感に察知した。小声で確認する。

「……もしかして、澪さんですか」
「どうしてわかった」
「なんとなくです。そういう顔をなさってました」
「……すまん」

 公私混同したことについて、桐吾は謝罪した。

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