明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします
(なんだこの女)

 桐吾としては拍子抜けしてしまう。
 うっかり封印を解いた祟り神など、祟り殺されかねないと思った。だからどうせなら久世家そのものを祟らせようと考えたのに。

 久世が設立した会社、久世建設。桐吾はその会長の孫だ。今は地域開発事業部第二部の部長だった。
 二十九歳の桐吾が部長職なのはもちろん背負う名字のおかげ。それも久世家をうとましく思う一因になっている。

(だが澪は何かに使えるかもしれない)

 この世のものではない女。そして化け猫。手の内にしておいて無駄にはならない。桐吾はそう計算した。ここは相手の心証を良くしておくべき。

「――わかった。無理を言ったな」
「とんでもないです」
「この祠は俺が責任持って建て直そう。これからは供養を絶やさないようにする」
「え? そんな、申し訳ないです」
「遠慮しないでくれ。昔のこととはいえ久世がやらかした結果だ。悪かった」

 軽く一礼する桐吾に澪は慌てふためいた。

(久世にもいい人はいるのかもしれない)

 あっさり転がされていることには気づかない。澪は素直な祟り神なのだ。
 しかし祠の建て直しなどよりも訊いておきたいことが澪にはあった。でないと桐吾がこのまま帰ってしまいそうな気配。そんなの困る。

「あの、ここはどこですか? 私これからどうすれば」
「――なに?」

 そもそもな質問に桐吾が硬直した瞬間、澪のお腹がグウゥと鳴った。

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