明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします
✿
「ほう。美人じゃな」
忠親は澪を見るなりそう言った。だが孫の嫁に会えた喜びというより値踏みする目のような気がする。澪はそっと畳に手をつき、頭を下げた。
「――澪と申します」
「うむ。作法もなっておる。どこに出ても恥ずかしくない嫁なのは肝心じゃ。それで桐吾、正親の話だな?」
あっという間に視線を外され、澪はぼんやりした。
(え。お爺さま、私には興味がない……ということ?)
座布団をすすめられることもなく話が変わってしまい、澪は動けない。桐吾はため息を隠して声をかけた。
「澪は仕事の話に口を出さなくていい。清水、いるか」
「はい」
今入ってきた襖が開くと、案内してくれた清水夫人がいた。
「澪を別室へ。茶でも出してくれ」
「かしこまりました」
桐吾にとってこの忠親の反応は織り込み済みだった。
澪の身上書は(適当に捏造して)提出してあるし、それに問題がなければ忠親として文句はないはず。あとは澪があまりに不健康で子が産めるか危惧されるとかでなければケチはつけられないと思っていた。そんな憶測は澪に失礼だと考えて胸にしまっておいたが。
「しばらく待っていてくれ」
「……はい」
素直に微笑んで退出する、澪の従順さ。それも忠親にとって好ましいはずだった。
「ほう。美人じゃな」
忠親は澪を見るなりそう言った。だが孫の嫁に会えた喜びというより値踏みする目のような気がする。澪はそっと畳に手をつき、頭を下げた。
「――澪と申します」
「うむ。作法もなっておる。どこに出ても恥ずかしくない嫁なのは肝心じゃ。それで桐吾、正親の話だな?」
あっという間に視線を外され、澪はぼんやりした。
(え。お爺さま、私には興味がない……ということ?)
座布団をすすめられることもなく話が変わってしまい、澪は動けない。桐吾はため息を隠して声をかけた。
「澪は仕事の話に口を出さなくていい。清水、いるか」
「はい」
今入ってきた襖が開くと、案内してくれた清水夫人がいた。
「澪を別室へ。茶でも出してくれ」
「かしこまりました」
桐吾にとってこの忠親の反応は織り込み済みだった。
澪の身上書は(適当に捏造して)提出してあるし、それに問題がなければ忠親として文句はないはず。あとは澪があまりに不健康で子が産めるか危惧されるとかでなければケチはつけられないと思っていた。そんな憶測は澪に失礼だと考えて胸にしまっておいたが。
「しばらく待っていてくれ」
「……はい」
素直に微笑んで退出する、澪の従順さ。それも忠親にとって好ましいはずだった。