明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします
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庭に面した小ぶりな部屋に、澪は通された。
松と池と石の庭園は手入れが行き届いている。光が差し込む広縁に座布団を置いたら白玉が喜ぶだろうと思った。
「本当に申し訳ありませんわねえ」
紅葉をかたどった練り切りをそっと置いた清水夫人が苦笑いする。
「旦那さまはご家族との接し方があまりお得意とは言えませんので」
「え……あの、そんな」
「旦那さまには言いつけないでくださいましね」
ほほ、と笑いながら清水夫人は目を潤ませる。
「坊ちゃまは、ずっと気を張ってお育ちになったんですよ。おおっぴらに甘える相手もいらっしゃらずに……私どもも身の回りを気にするぐらいしかさせていただけませんでしたし」
澪はこくんとうなずいた。そのあたりのことは聞かされてから来た。清水夫妻はきちんとした使用人だと桐吾も認めていたのだ。厳しかったのは祖父と、久世の一族の目。
「清水さんのことは、よく面倒をみてもらったと桐吾さんが」
「まあ嬉しい。坊ちゃまったら我慢強くてちっとも泣き言をおっしゃらないので、お世話のしがいはありませんでしたけど」
そう言う笑顔から、もっと甘えて頼ってもらいたかったとの思いがにじむのを澪は感じ取った。
「これからは――どうぞ澪さま、坊ちゃまをよろしくお願いいたします」
お盆を横に置いて深々と頭を下げる清水夫人に、澪も座布団を降りた。そっと畳に手をつく。
「こちらこそ、よろしくお願いします――また今度、桐吾さんが子どもだった頃のことを教えてくださいますか?」
小首をかしげてねだると、清水夫人は嬉しそうにうなずいてくれた。
庭に面した小ぶりな部屋に、澪は通された。
松と池と石の庭園は手入れが行き届いている。光が差し込む広縁に座布団を置いたら白玉が喜ぶだろうと思った。
「本当に申し訳ありませんわねえ」
紅葉をかたどった練り切りをそっと置いた清水夫人が苦笑いする。
「旦那さまはご家族との接し方があまりお得意とは言えませんので」
「え……あの、そんな」
「旦那さまには言いつけないでくださいましね」
ほほ、と笑いながら清水夫人は目を潤ませる。
「坊ちゃまは、ずっと気を張ってお育ちになったんですよ。おおっぴらに甘える相手もいらっしゃらずに……私どもも身の回りを気にするぐらいしかさせていただけませんでしたし」
澪はこくんとうなずいた。そのあたりのことは聞かされてから来た。清水夫妻はきちんとした使用人だと桐吾も認めていたのだ。厳しかったのは祖父と、久世の一族の目。
「清水さんのことは、よく面倒をみてもらったと桐吾さんが」
「まあ嬉しい。坊ちゃまったら我慢強くてちっとも泣き言をおっしゃらないので、お世話のしがいはありませんでしたけど」
そう言う笑顔から、もっと甘えて頼ってもらいたかったとの思いがにじむのを澪は感じ取った。
「これからは――どうぞ澪さま、坊ちゃまをよろしくお願いいたします」
お盆を横に置いて深々と頭を下げる清水夫人に、澪も座布団を降りた。そっと畳に手をつく。
「こちらこそ、よろしくお願いします――また今度、桐吾さんが子どもだった頃のことを教えてくださいますか?」
小首をかしげてねだると、清水夫人は嬉しそうにうなずいてくれた。