明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします
✿ ✿
伯父・正親のスパイだったという華蓮の自白。桐吾は表面上冷静に対処した。
なるべく口を挟まず聞き、非難する態度は見せず、客観的な立場で質問をいくつか。
(だが……うまくできたかどうか)
さすがにこんな事態の経験はない。親族の威光で管理職にあるが、若輩の身だ。
帰宅した桐吾はざぶりと湯舟であたたまっていた。そろそろ冬。車の中も冷えるので、帰れば風呂が沸いているというのはありがたい。澪さまさまだ。
湯につかりながら一日の出来事を思い返すのが日課になっているのだが、今日ダントツで重要な話は華蓮の一件だった。
(……まったく、ひどい事を)
それは伯父に対しての感想だった。弱い立場の社員への脅迫、強要。さらに事業に関係ない命令は、華蓮の通常業務を妨害する行為にあたる。
(伯父を排除しなければ)
桐吾はあらためて決意した。あの男とは相いれないと強く思う。
ただ一人残った家族である妹を品物のように扱っただけではないのだった。澪をないがしろにし、社員を尊重しない。みずからが効率よく利益を得ることに汲々とし、会社組織を軽んじる。
「プライドの話……なんだよな」
桐吾はひとりごちた。
人間としての、誇りと矜持。
そこを否定してくる伯父にずっと嫌悪を抱えていたから――澪に言ったのだ。「祟れ」と。
「澪――本当に祟ってなんとかしてくれないものだろうか」
「なあにー? 呼びましたー?」
外で澪が声を張り、桐吾はズルリと湯に沈みそうになった。洗面所の入り口あたりから、だろうか。今の桐吾は無防備な裸だ。そのせいか慌てた。
「なんでもない!」
「のぼせちゃいますよ。上がってお夕飯にしてくださいね」
「わかった」
すりガラス越しでも澪が微笑んでいるのが見える気がした。立ち上がった桐吾はタオルで体を拭く。
――澪のようにただ人を思いやり、気づかい、寄りそっていければ幸せなのに。
そう思った。〈愛〉をもって祟り神となった澪が愛おしい。
「待てよ」
桐吾は気づいて、頭にタオルをかぶったまま手をとめた。乱れた髪からまだ水が垂れる。
なんとかできるのではないか?
――祟り神・澪の力があれば。
伯父・正親のスパイだったという華蓮の自白。桐吾は表面上冷静に対処した。
なるべく口を挟まず聞き、非難する態度は見せず、客観的な立場で質問をいくつか。
(だが……うまくできたかどうか)
さすがにこんな事態の経験はない。親族の威光で管理職にあるが、若輩の身だ。
帰宅した桐吾はざぶりと湯舟であたたまっていた。そろそろ冬。車の中も冷えるので、帰れば風呂が沸いているというのはありがたい。澪さまさまだ。
湯につかりながら一日の出来事を思い返すのが日課になっているのだが、今日ダントツで重要な話は華蓮の一件だった。
(……まったく、ひどい事を)
それは伯父に対しての感想だった。弱い立場の社員への脅迫、強要。さらに事業に関係ない命令は、華蓮の通常業務を妨害する行為にあたる。
(伯父を排除しなければ)
桐吾はあらためて決意した。あの男とは相いれないと強く思う。
ただ一人残った家族である妹を品物のように扱っただけではないのだった。澪をないがしろにし、社員を尊重しない。みずからが効率よく利益を得ることに汲々とし、会社組織を軽んじる。
「プライドの話……なんだよな」
桐吾はひとりごちた。
人間としての、誇りと矜持。
そこを否定してくる伯父にずっと嫌悪を抱えていたから――澪に言ったのだ。「祟れ」と。
「澪――本当に祟ってなんとかしてくれないものだろうか」
「なあにー? 呼びましたー?」
外で澪が声を張り、桐吾はズルリと湯に沈みそうになった。洗面所の入り口あたりから、だろうか。今の桐吾は無防備な裸だ。そのせいか慌てた。
「なんでもない!」
「のぼせちゃいますよ。上がってお夕飯にしてくださいね」
「わかった」
すりガラス越しでも澪が微笑んでいるのが見える気がした。立ち上がった桐吾はタオルで体を拭く。
――澪のようにただ人を思いやり、気づかい、寄りそっていければ幸せなのに。
そう思った。〈愛〉をもって祟り神となった澪が愛おしい。
「待てよ」
桐吾は気づいて、頭にタオルをかぶったまま手をとめた。乱れた髪からまだ水が垂れる。
なんとかできるのではないか?
――祟り神・澪の力があれば。