明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします
 虚を突かれた桐吾がのどをグッと鳴らした。笑いを飲み込んだのだ。

(そう……澪はせいぜい蒸気機関ぐらいしか知らないのか?)

 おもしろくなって、桐吾はわざと長い言い方で答えた。

「プラグインハイブリッドエンジン」
「ぷら……じん?」
「うみゃーう!」

 後部座席から白玉がうなった。からかわれていると察知したのだろうか。でも桐吾に飛びかかったりはしない。シートに爪をたて、しがみついていた。猫だって初めての速度は怖いらしい。

「白玉だいじょうぶ? やっぱり抱っこにする?」

 自分だってカチコチに固まっているくせに澪は強がった。飼い主としての矜持だ。白玉を抱いていた方が澪も落ち着く……というのは言わない。
 そんな祟り神と化け猫のようすにかまわず、桐吾は実務的な話を始めた。

「澪は何歳だ?」
「に、二十一よ」
「大学生だな……じゃあ俺との交際を親に反対されて家出した、とかか。嘘くさいが」
「なんの話……?」
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