明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします
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ふわり。澪は地に足をついて立った。草履の下で落ち葉がカサと音をたてる。
「――白玉!」
澪が目を開けると、着物の裾に白猫が頭をすり寄せていた。
澪を見上げる猫の目は珍しいことに青と黄。左右で違う。ならばこれは澪の猫、白玉で間違いなかった。
「白玉、本当に白玉なの? 生きてたの?」
「なぁーうー」
のどを鳴らす白猫を抱き上げ、澪の目に涙が浮かんだ。
この白玉の亡骸を抱いて池に身を投げたはずだったのに。これはなんの幻だろう。
「――澪姫、なのか?」
いきなり男の声がし、澪はぎくりと後ずさった。顔を上げると数歩離れたところに若い男がいる。彼は澪が良く知る人に似ていた。
「……とうご、さん?」
呼びかけた相手は凛々しく男性的な顔立ち。鋭い目をしてにらんでくるが、軽く青ざめていた。