明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします
「ひゃん!」
「ああ、だいじょうぶだ……高橋? すまないな休日に」

 応答し、桐吾が玄関に出ていく。ガチャリとドアが開き、女性の声がリビングの澪にも聞こえた。

「指示された物は揃えたと思いますが……女性の服一式ってどういうことです部長。し、下着もだなんて」
「悪いとは思ってる。だが俺に女性ものの下着は調達できないだろう」
「――サイズがわからないのでスポーツブラのようなものしか買えませんでした。あと部屋着と、外出用はふんわりしたワンピース系なので大きさは問題ないはずです」
「恩に着る」

 誰だろうと思った澪はそうっとドアの隙間からのぞいた。
 玄関にいたのはスッキリしたパンツスーツにショートボブの女性。大きな袋が三つも置いてあるのはつまり、澪のための着替えもろもろだ。

 三十歳の高橋華蓮(たかはし かれん)は桐吾の部下だった。
 部長という役職にすぎない桐吾に公の秘書はつけられないのだが、秘書的な仕事を任されている。頭を出した澪と視線が合い、華蓮は目を見開いた。

「――!」
「ん? ああ澪、出てこなくていい」

 振り向いた桐吾は迷った。まだ澪は現代の事情になじんでいない。華蓮から不審人物だと思われては見合いを壊す計画が台無しだ。

「ぶ、部長。その方は――」
「――俺の大切な人だ。入籍したわけじゃないが、内縁の妻だと思っていい」
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