明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします
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「教えてない物にはさわるな。何かが鳴っても対応しなくていい。外には出るな」
「わかってます!」
連日テレワークするわけにもいかず、今日の桐吾は出社する。留守番の澪はクドクドと注意され、ちょっとふくれてみせた。
「もう。子どもじゃないんですよ」
「令和によみがえって何日めだ? 赤ん坊だろ」
冷たい顔で憎まれ口を叩き、桐吾は出ていこうとする。
「行ってらっしゃい」
小さく言ったら桐吾は軽く片手を上げてくれた。閉まったドアの向こうで足音はすぐに消えてしまう。澪はいきなり寂しくなった。
(……手を握ってくれた時はやさしかったのに)
今朝は桐吾の雰囲気が変わっていた。ピシリとした服を着て、鋭い目つき。
(あれがいつもの桐吾さんなのかしら)
そういえば初めて会った時にはにらまれていた。ほんの二・三日でずいぶん澪となじんでくれたが、それは――。
(夫婦だから? 契約の、だけど)
もちろん妻といってもそれらしいことは要求されていない。寝室は別だ。最初の夜はリビングのソファで白玉と眠ったし、次の日には注文したマットレスで澪の部屋をしつらえてもらった。