明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします
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「おはよう」
いつものように桐吾が挨拶すると、地域開発事業部第二部がザワついた。妙な反応に桐吾は眉をひそめる。
デスクに向かうとすぐに高橋華蓮がタブレットを持ってやってきた。今日の予定の確認だ。
「おはようございます、部長」
「――高橋、何かあったか? 雰囲気がおかしいな」
「あ、いえ……」
不審な顔の桐吾を前に、華蓮の目がおよいだ。リモートの会話に割り込んだ〈猫と女の声〉が噂になっているのだとは言いにくい。
部内で憶測が乱れ飛んでも華蓮は黙秘をつらぬいていた。澪という女性の目撃証言など漏らしては、桐吾の信頼を裏切ることになる。
(――私はとっくに裏切っているのだけど)
そう考えてチクリと胸が痛んだ。でもそんなことはおくびにも出さない。
「部長がリモートなんて珍しかったので。体調不良かと思われただけですよ」
「別に――大物家具の配送を頼んだんで在宅するしかなかっただけだ」
「そうでしたか。今日なんですが、朝イチで会議が入りまして――」
華蓮は噂を告げず、桐吾のようすも変わらない。なので皆、受け流すしかなかった。通常のフリをして業務は進む。
桐吾が結んだ〈祟り神との契約〉など誰にも内緒――だが華蓮の方も、上司に明かせない秘密を抱えているのだった。
「おはよう」
いつものように桐吾が挨拶すると、地域開発事業部第二部がザワついた。妙な反応に桐吾は眉をひそめる。
デスクに向かうとすぐに高橋華蓮がタブレットを持ってやってきた。今日の予定の確認だ。
「おはようございます、部長」
「――高橋、何かあったか? 雰囲気がおかしいな」
「あ、いえ……」
不審な顔の桐吾を前に、華蓮の目がおよいだ。リモートの会話に割り込んだ〈猫と女の声〉が噂になっているのだとは言いにくい。
部内で憶測が乱れ飛んでも華蓮は黙秘をつらぬいていた。澪という女性の目撃証言など漏らしては、桐吾の信頼を裏切ることになる。
(――私はとっくに裏切っているのだけど)
そう考えてチクリと胸が痛んだ。でもそんなことはおくびにも出さない。
「部長がリモートなんて珍しかったので。体調不良かと思われただけですよ」
「別に――大物家具の配送を頼んだんで在宅するしかなかっただけだ」
「そうでしたか。今日なんですが、朝イチで会議が入りまして――」
華蓮は噂を告げず、桐吾のようすも変わらない。なので皆、受け流すしかなかった。通常のフリをして業務は進む。
桐吾が結んだ〈祟り神との契約〉など誰にも内緒――だが華蓮の方も、上司に明かせない秘密を抱えているのだった。