明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします

初めてのデート

「白玉ったら、桐吾さんにご挨拶?」

 澪は声をあげて笑ったが、舐められた桐吾は微妙な表情だ。白玉は知らん顔ですぐに桐吾の腕から飛び降りる。きれいに香箱座りすると口もとをペロリとし満足げだ。
 ――こうしていると化け猫には見えない。まあ澪も祟り神らしくないのだが。

「今のなんだったのよう、白玉」

 澪は機嫌よくウリウリと猫の背をなでた。白玉はなすがまま。

(白玉と桐吾さんが仲良しになるのは嬉しいわ。せっかく――家族なんだもの)

 契約夫婦と、その飼い猫。ならば家族といっても差しつかえないだろうが――。
 桐吾は上着をハンガーに掛けると「シャワーを浴びる」と風呂場に行ってしまった。見送りながら澪は――幸せと不安を同時にかみしめる。

(こうしていられるのはいつまでだろう)

 まだ出会ってほんの数日の桐吾。久世の名前に驚いたし無愛想な人だけど、そばにいて不思議と安らいだ。だけどそれも契約が終わるまでのこと。

(私、桐吾さんのお見合いをお断りするための偽の奥さんだもの。破談になった後、祟り神として役に立たないなら――ここにいる意味がなくなっちゃう)

 そうしたら祟り神と化け猫はどうすればいい。
 路頭に迷う? 生活のことだけなら、成仏を目指すとか再び祠に封じられるとかでなんとかなるはず。
 だけど。

 ――桐吾と離れることを考えて、澪の胸はズキンと痛んだ。


< 34 / 177 >

この作品をシェア

pagetop