明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします
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 澪と白玉がマンションにこもって数日。やっとめぐってきた桐吾の休日に、そろって外出することになった。

「今の街を知ってもらわないとな」
「はい!」
 
 にこにこ顔の澪の腕には白玉が抱かれている。そして桐吾の手には猫用キャリーバッグ。さらに白玉の肩にはハーネスが装着されていて散歩もできる装備だ。桐吾が入手してきたのだった。

「白玉、この(たすき)みたいのカッコいいわよ」
「にゃお」

 白玉は昔、屋敷の庭でのびのび遊んでいた。でも桐吾のマンションは2LDK+Sの十二階。閉じ込めることになってしまうのだが、たまに外へ出ないと息が詰まる。

(今なら紅葉が進んでいるし眺めのいい店でランチにするか。ペット同伴オーケーなテラス席はどうだろう)

 桐吾の思考は普通にデートプランだ。だがそれを疑問には思わなかった。桐吾の方も〈妻〉である澪にずいぶんなじんでいる。

「今日は電車に乗るぞ。それに買い物と食事」
「電車! 動画で観ました!」

 澪が家でずっと何をしていたかというと、現代世界の学習だった。タブレットの使い方を教えてもらい、ニュースを読み動画を観る。おかげで平日の間まったく退屈しなかった。

「令和の日本を実感しましょうね、白玉」

 明治初期からタイムスリップしたかの存在、澪と白玉。
 あまりに浮き世離れしていては桐吾の見合い相手に鼻で笑われてしまう。本当に〈妻〉がいるなら会わせろと言われた場合にあなどられたくなかった。

(そんなの桐吾さんの評判にかかわるもの。ちゃんと今風の女の人にならなくちゃ)

 澪はフン、と気合いを入れた。

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