明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします
  ✿

「お待たせ、白玉。ここは猫も歩いていいんですって」
「にゃーう!」

 ケージから出された白猫はあたりをキョロ、としてから伸びをした。
 ショッピングモールの屋上に作られた庭園。木陰とベンチと散歩道が心地よい。ペット可のエリアで澪は、白玉と一緒に深呼吸した。ハーネスとリードでつながれた白玉の目は、空を見て輝く。

(令和っておもしろい)

 澪は、ツと振り向いた。ベンチの桐吾と目が合い、はにかむ。白玉を出したケージと買い物の荷物を持って、桐吾は大変そうだ。
 でも白玉は飼い主を引っ張る。くるり。澪のワンピースの裾がひるがえった。脚に風があたるのにはまだ慣れない。桐吾がゆっくり追いかけてきてくれた。

 澪が生まれたのは江戸につながる街道沿いだった。すぐそこに宿場があってそれなりに栄えていたが、一歩離れればのどかな里山。明治になり江戸が東京と名を変えても異国の文物はなかなか入ってこなかった。
 だから初めてのことばかり。キラキラした街。見たことがない品。途切れることのないざわめき。

(こんな景色が見られるなんて……祟り神になってよかったなあ)

 でなきゃ時を越えよみがえるなんてできない。
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