明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします
 こうしていられるのは桐吾のおかげだ。目覚めた時に白玉と二人きりだったら、ずっと林の中で泣いていたと思う。
 それが桐吾に守られて、知らない物に触れて。なんて幸せなんだろう。

(あ……でも最初はお見合いを壊すんじゃなく、久世を祟れって言われたんだった)

 自分も久世の名を持つ桐吾がどうして久世を憎むのか。理由を訊いてみてもいいだろうか。

「白玉はきれいな猫だな」

 いきなり桐吾に言われた。秋の日にきらめく白い毛並みをしげしげとながめている。

「オッドアイもミステリアスでいい。ハーネスは右目に合わせて青にしたんだが似合ってよかった」

 澪には難しい言葉だったが、ほめられたのはわかった。白玉もそう感じたのか振り向いて澪を見上げる。

「楽しいね、白玉」
「ふみぃ」
「……白玉は澪の言葉がわかってるんじゃないか?」

 並んで歩きながら桐吾は猫に目をやった。
 今もそうだが、澪が話しかけると白玉はちゃんと返事をする。声色と態度でイエスかノーかハッキリ伝わった。

「利口なものだ」
「ふふ、だって白玉は……祟り猫? 化け猫? それとも猫又なのかしら」
「ふみゅ……」

 からかい混じりの澪に対し、あきれた声で応える。やはりある程度は意思が通じていそうだ。

「白玉とおしゃべりできたらいいわね。ねえ、話せたら何を言ってくれる?」
「そりゃあ、澪のことが大好きだと言うだろう」

 桐吾は素直にそう思った。白玉が一瞬不服そうに桐吾をにらむ。お前が言うな、と聞こえた気がした。

「……みゃう」

 不承不承といった面もちながら、白玉は賛同だと鳴いた。

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