明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします
澪は思い出に心を馳せ、目を細める。絞り出された言葉に桐吾は不思議とショックを受けた。
(訊こうと思っていた許婚のこと――やはり澪はその男を、まだ)
胸に黒いものが広がっていく。そのことに自分で驚いた。
(何故俺は、澪にこだわる? 利用するだけじゃなかったのか。祟り神として。契約結婚の相手として。いや、俺はもしかして本気で澪のことを)
そうなのかもしれない。
現代にスレていない澪。何にでも驚いて楽しんで笑う澪。そのやわらかな心は桐吾のことも癒してくれる。
(澪は祟り神なんて言われていたが、この世につなぎとめられているのは恨みつらみのせいじゃない)
それはきっと、人を想う心から――その相手は冬悟なのだろう。澪は今、彼を懐かしげに思い出している。頬が強張るのをこらえ、桐吾は平静をよそおった。
「冬悟、か。俺と同じ名の男だな」
「そう――」
澪はふと真っ直ぐに桐吾を見た。そのまなざしが懐かしげだ。
「――似てるんです」
「え?」
「冬悟さんと、桐吾さん」