明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします
(……言い方が可愛すぎる)

 古めのタオルを出してもらった澪は洗面所でキュッと絞ってくる。床に広げてから白玉のケージを開けると猫は自主的にタオルの上で足をこすった。見下ろしながら桐吾は首をひねった。

「……本当に賢い。元からこうなのか」
「そう。いつも帰ってくると広縁で鳴いて人を呼ぶんです。手拭いを持っていくと自分でこうするの。子猫の頃から拭いてやってたから覚えたみたい。白玉はえらいわね」

 化け猫になったからというわけじゃないのか。感心する桐吾のことを、白玉はチロリと見上げた。なんだかドヤ顔だった。

  ✿

 シャワーを済ませてもまだ夕方だ。夕陽が流れ込むダイニングの椅子で、澪は洗いあがりの長い髪を拭いていた。
 部屋着のスウェットは華蓮が買ってきたシンプルなグレー。女性用なのでサイズは合っている。ブラトップを下に着るよう要請したので桐吾も視線に困ることはなかった。
 桐吾は思いついてドライヤーを持ってきた。

「澪。こっちへ」

 ソファに呼びつけ、その前の床を示す。

「……なんですか」
「乾かしてやる」

 わけがわからず座った澪を脚の間に入れ、桐吾はドライヤーを温風にした。ブォン。

「きゃ!」
「怖くない」

 後ろからそっと頭に触れる。風を当てながら桐吾は髪に指を入れた。

「ひぅっ」

 澪は小さく悲鳴をもらす。
 背すじがジンとした。髪結いさんにさわられてもそんなことなかったのに。

(桐吾さんだから? あぁ……くすぐったい)

 澪がビクンとしたのは桐吾も気づいたが、容赦しなかった。未知の嗜虐心が頭をもたげる。

「熱くないか」
「ん……は、い。あぅっ」

 生えぎわからスルスルと髪をかき上げ風でなぶった。指の腹でわざとうなじをなでると、我慢する澪の背が軽く反る。楽しい。

(冬悟とやらも、澪にこんなことはしていないだろう)

 そう思うと溜飲が下がる。

(澪は今――俺の妻なんだからな)

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