明治女子、現代で御曹司と契約結婚いたします
「あほう! ちゃんとついて(・・・)いたであろうが!」
「いや、そんなところ見てない」
「ねえ白玉? おいで」

 男同士の言い合いにかまわず澪は体を起こし手招いた。白玉の目がいきなりやさしくなる。つかつかと澪の前に立った白玉は小学校高学年ぐらいの子どもの背丈。膝立ちの澪からは見上げるかたちだった。

「すてきな格好……白玉は神さまのお使いなの?」
「何を言う。澪とて祟り神であろう? 我もまた、祟り猫になったまで」
「たたりねこ」

 聞かない言い方に桐吾が眉間を押さえた。だが白玉はそんな反応を無視。澪に手をのべ立たせる。

「澪――愛している」

 立ち上がった澪を見上げ、藪から棒に白玉は告げた。

「我と話せたらと澪は楽しみにしていたな。我がずっと伝えたかったのは――澪が大事で、澪が大切で、澪のことが大好き。それだけだ」
「白玉――」
「我は正直なのだ。澪といたいから共にある。桐吾のように偽の妻になれなどとは言わぬ」

 馬鹿にしたように横目で見られ、桐吾はムッとした。

「俺は――」
「ハンッ! 桐吾はそのうえ澪をいたぶって! からかって! あのような声を上げさせおって! 変態め!」
「言いがかりだ!!」

 桐吾は懸命に否定した。断じて変態ではない――まあ反応を楽しんでいたのはその通りだが、「あのような声」と言われるほどの――。

「待て。おまえ子どものくせに妙なこと言うのはやめろ」
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